思考力を格段に上げる、具体化と抽象化の「往来術」

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「具体」と「抽象」の違い


人類の知の発展は、2つの軸で捉えることができる。1つは「知識の拡大」だ。知識や情報の量的な拡大である。もう1つは「抽象化」である。具体から抽象へ、知の抽象度を上げることで、私たちは知を発展させてきた。
知識の拡大とは、数や種類が増えることであり、いわば横への拡がりであることから、「横軸」と表現しよう。一方で抽象度の上昇は、質が上がることを指すため、「縦軸」とする。
人類の知は、この横方向と縦方向の2つの軸で発展してきた。横軸を底辺に、縦軸を高さにしたピラミッド(三角形)を思い描いてみて欲しい。本書ではこれを「具体⇄抽象ピラミッド」と称し、さまざまな事象をこのピラミッド構造で説明していく。

ピラミッドの縦軸は、本書のテーマである「具体と抽象」という、質的な発展を指す。この発展を促すものには、(1)「法則の発見」と(2)「言葉や数といった抽象概念の発展」の2つがある。
1つ目の代表例は、自然科学におけるさまざまな法則である。個々の事象の間に法則性を見つけることで、実際に経験していないことでも、ある程度は予測できるようになる。
2つ目についても、言葉や数といった抽象概念の発展がなければ、そもそも知識を蓄えたりコミュニケーションしたりすることが成り立たないため、きわめて重要な要素である。

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「具体⇄抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問

抽象化はWhy、具体化はHow


具体が個別事象であるのに対して、抽象はそれらの関係性を表現するものである。
この関係性のうち、原因と結果といった「因果関係」、あるいは「目的と手段」を関係づけるのはいずれもWhy、つまり「なぜ?」という疑問符で表せる。
よって抽象化とは、「Whyを問うこと」と言い換えられる。

抽象化とは、メタ視点で考えることでもある。これは問題を解く前に、問題そのものについて考えること、「(より上の視点から)そもそも〇〇について」考えることを意味している。「全体を俯瞰すること」と言ってもいい。
抽象の世界は、「見える人にしか見えない」という特徴がある。抽象の世界が見えている人は、具体の世界も見ることができるが、具体の世界しか見えない人は、抽象の世界は見えない。
一方で、具体化のための疑問符の代表がHowだ。ここでいう具体化とは、「数字と固有名詞にする」ことを指す。典型的なのは業務目標だ。
今期の目標として「〇〇の徹底」「〇〇の強化」といった抽象的な目標では、いくらでも逃げ道ができてしまう。そうしたことを避けて確実なアクションを引き起こすためには、数字と固有名詞で具体化する必要がある。

具体⇄抽象ピラミッドの活用


問題解決は、大きく2つに分けられる。すなわち「そもそも問題は何なのか?」という前半の問題発見と、「その問題をどうやって解決するのか?」という後半の(狭義の)問題解決である。
このうち問題発見に必要なのは、さまざまな具体的事象から本質的な課題を抽象化して抽出することだ。一方で問題解決にあたっては具体化が重要になるため、方向性が180度異なっている。
たとえば、新しい世代の製品や組織を生み出す際に必要なのは、「そもそもなぜそれが必要か?」というWhyである。逆に、一度定義された問題を具体的な製品やサービスに落とし込んでいくときは、Howを問うことで具体化していく。

問題解決においては、具体と抽象の間の「縦の移動」があるものとないものがある。縦の移動、つまり「具体→抽象→具体」というのが、典型的な抽象化と具体化を組み合わせた問題解決だ。
これは表面的な問題だけでなく、根本的かつ本質的な問題にたどり着くことができる考え方である。
これに対して、「具体→具体」という横方向だけの問題解決は、言われた通りに何も考えず、「そのまま対応する」というパターンである。
顧客から「値段が高い」と言われたから値下げをする、前例があるからその通りにやる、あるいは過去の自分の成功体験を周囲に押しつけるといった言動も、これに相当する。
仕事を取り巻く環境が安定している場合は、横方向だけの問題解決は決して悪くない。
しかしAIやロボットが人間のやっていることを次々と代替していくような変革期においては、具体的な事象を抽象化し、応用を利かしていく縦移動の問題解決が不可欠である。

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「具体⇄抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問

コミュニケーションギャップの原因


私たちは日常的に、さまざまなコミュニケーションギャップと遭遇する。
その根本原因は、私たち一人ひとりの経験や知識、あるいは思考回路が異なることによって、「違うものを見ている」ことに気づいていないからだ。先に述べたように、具体の世界しか見えない人には、抽象の世界は見えない。
また、「総論賛成各論反対」というギャップは、抽象的な総論では異論はないが、いざ自分に関わる具体的なレベルに話が降りてくると、各自の利害が反映されて意見が分かれるということである。
たとえば、「税金の無駄遣いはやめよう」という方針に反対する人はいないが、削減される予算が自分に関係することになった途端、「それは話がおかしい」ということになる。
抽象とは、ある意味「話を都合の良いように切り取ること」でもあるのだ。
企業でよく言われる、「本社は現場も知らずに理屈ばかり言ってくる」といった、本社と現場のコミュニケーションギャップも、同じように抽象と具体の構造から生じている。

さらにコミュニケーションギャップの原因を探ってみると、「他人」と「自分」のとらえ方に、具体と抽象のレベルでバイアスがあることが挙げられる。
抽象化の典型が、「レッテル貼り」だ。これは他人を「守旧派」だとか「改革派」だとかいった形で、単純化して一括りにして扱うことを指す。
他人には平気でレッテル貼りをするのに、自分がそれをされると不快に感じるのは、自分の詳細な具体は見えやすく、それゆえに特別な存在と感じられるからである。
この「他人を抽象レベルで見る」と「自分を具体レベルで見る」という習性には、相当強いバイアスがかかっている。
他者とのコミュニケーションにおいては、他人のことはなるべく具体的な事情まで考慮するようにして、自分のことはあまり特別視せずに引いた目で一般化してみるぐらいが、ちょうど良いのではないか。

抽象化の応用として、アナロジーが挙げられる。アナロジーとは、日本語でいう「類推」のことだ。見た目の類似点ではなく、抽象化された特徴のレベルでの「目に見えない類似点」を探す。
たとえば、「自動車の座席」と「年末に配られるカレンダー」の共通点は何だろうか?
答えは、「実際にはあまり使われていない」というものである。このような共通点を見つけると、現状でも「実際に使われないものが大量に生産・消費されている」ことが見えてくる。
重要なのは、それ自体の良し悪しを判断するというよりも、アナロジーによってそうした視点そのものを獲得できることだ。アナロジーから得られた視点は、さまざまな課題解決に応用できる。それが新しい価値創造につながるのだ。

抽象化のトリセツ


「言葉」は人類が生み出した、抽象化における最大のツールだ。しかし抽象化には、先に述べたように「話を都合の良いように切り取る」性質がある。
そのため各自の抽象化の違いによって、コミュニケーションギャップを引き起こすことがある。同じ言葉でも、言っていることが違うというのが典型例だ。
これを回避するには、「どういう条件の下で」「どのような目的で」といった前提条件を明確にする必要がある。
そもそもそれはどういう状況で起こっているのか、それを語っている人はどんなことを狙ってその行動をとったのか、そのときにどんな制約条件があったのかといったことを、十分に確認しなければならない。
それをしないまま行われる議論は、そもそも議論にすらなっていない。そのことを自覚すれば、世の中の無用な軋轢は減らせるだろう。

抽象レベルで物事が見える人には問題に映っても、具体レベルでしか見えない人には何が問題なのか理解できないこともある。
たとえば、気候変動が具体的な変化を生活にもたらしているとしても、「環境問題」となると、依然として抽象の世界のことになってしまう。
「〇〇が人体や地球環境にとんでもない悪影響がある」と知ってしまった人は、それを1人でも多くの人に訴えたくて仕方がなくなる。
だが、そういうことに「気づきたい人」には大きな声を出さなくてもすぐ届く一方で、そもそも「気づきたくない人」にとっては何の成果も出ないばかりか、「大きなお世話だ」と思われて、互いに不愉快になるのがオチである。
気づいた人(意識が高い人)と、気づいていない人の関係は常にそうなってしまう。
他方で、抽象化が得意な人には、「人の話が聞けない」傾向がある。共通点に着目して、「すべて同じ」と収斂をしていく抽象の世界と、相違点に着目して「すべて違う」と拡散していく具体の世界の違いが、こうした傾向を生み出している。
抽象レベルで物事をとらえている人にとって、日常のさまざまな話はすべて「どこかで聞いた話」になってくる。
たとえば、サッカーの話と演劇の話と職場の人間関係の話が「すべて同じ構造」だと見抜いてしまうと、「またあの話か」となってしまう。だから同じ話を延々と聞かされている気分になり、とてもすべてを聞いていられなくなる。
このような理由から、抽象化能力の高い人は、周囲から「飽きっぽい」と見られることが多い。

コミュニケーションギャップが生じるかどうかは、それぞれが具体と抽象という視点を持てるかどうかにかかっている。大切なのは、いま行われていることについて、具体と抽象の座標軸上でマッピングしていくことだ。
これができれば、ほとんどの問題は解決したも同然である。問題とは、発見されたらほとんど解けたも同然だからだ。
なかなか解決できないと思われている問題も、じつは「そもそも問題が何かよくわかっていなかった」という場合が多いのである。

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「具体⇄抽象」トレーニング 思考力が飛躍的にアップする29問


★大好評ロングセラー『メタ思考トレーニング』の姉妹作、ついに登場!

★「具体と抽象(の往復)」。その思考回路を持つと、あなたの知的能力は劇的に進化する!


「具体⇄抽象」とは、抽象化と具体化という形で具体と抽象を行き来する思考法のこと。 斬新な発想をできるようになるだけでなく、無用な軋轢やコミュニケーションギャップの解消にも役立ちます。
そこで本書では、「抽象化と具体化の基本動作」から「仕事・日常生活における実践・応用の仕方」まで解説するとともに、トレーニング問題も多数用意しました。

●問題:「目覚まし時計」「懐中電灯」「旅行代理店」「カメラ」「お金」の共通点は?
●問題:「自動車の座席」と「年末に配られるカレンダー」の共通点は?
●問題:「理系」と「文系」の違いは何でしょうか?
●問題:「成功」の反意語は何でしょうか?
●問題:「現象と理論」「一般論と例外」「チャーハンと中華料理」「物々交換と貨幣取引」……どちらが具体で、どちらが抽象でしょうか?

こうした問題を解くうちに「具体⇄抽象」の思考回路が身につき、「自分の頭で考える力」が飛躍的にアップする一冊!


【本書の構成】
第1章:なぜ具体と抽象が重要なのか?
第2章:具体と抽象とは何か?
第3章:抽象化とは?
第4章:具体化とは?
第5章: 「具体⇄抽象ピラミッド」で世界を眺める
第6章:言葉とアナロジーへの応用
第7章:具体と抽象の使用上の注意

【以下、本書「第1章」より抜粋】
皆さんは以下のような場面に遭遇したことはないでしょうか?

・言うことがころころ変わる上司や顧客にいらだつ
・SNS上の不毛な対立に悩まされる
・「言葉の定義の違い」によるコミュニケーションギャップを感じる

これらは全て、本書のテーマである「具体と抽象」の視点の欠如が重要な要因となっています。これらがどのようなメカニズムで発生し、どのように世の中を見ればこうしたストレスを減らすことができるのか(なくすことは不可能ですが)を、本書では解説していきます。

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